片頭痛の発作治療の有効性は?

片頭痛については近年次々に新薬が登場し、ガイドラインにも変更が加えられています。今回取り上げる論文では、片頭痛に対する様々な薬物療法・非薬物療法の有効性についてのシステマティックレビュー/メタ解析です。

Acute Treatments for Episodic Migraine in Adults: A Systematic Review and Meta-analysis.VanderPluym JH, Halker Singh RB, Urtecho M, et al.JAMA. 2021 Jun 15;325(23):2357-2369. doi: 10.1001/jama.2021.7939.PMID: 34128998

論文の概要

【目的】  

 成人の片頭痛における急性の頭痛発作に対する治療の有効性と有害性を評価する

【方法】

  • 複数のデータベースから2021年2月までに登録された文献を検索した
  • 片頭痛発作の急性期治療について有効性と有益性を検討した無作為化試験およびシステマティックレビューを選択し、データ抽出、メタ解析を行なった
  • 主要アウトカムは無痛、疼痛緩和、持続的無痛、持続的疼痛緩和、有害事象とした
  • エビデンスの強さ(strength of evidence:SOE)は、AHRQ Methods Guide for Effectiveness and Comparative Effectiveness Reviewsで評価し、「高」「中」「低」「エビデンス不十分」と分類した

【結果】

  • トリプタンとNSAIDsのエビデンスは15件のシステマティックレビューから要約した
  • これ以外には115件の無作為化試験の28803例が含まれた
  • トリプタンとNSAIDsはプラセボと比較して、2時間後と1日後の疼痛軽減と関連していた(SOE:中〜高)
  • 以下の薬剤が疼痛軽減、軽度の有害事象と関連していた
    • カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP)受容体拮抗薬(SOE:低〜高)、Lamiditan(5-HT1F receptor agonist; SOE:高)、ジヒドロエルゴタミン(SOE:中〜高)、エルゴタミン+カフェイン(SOE:中)、アセトアミノフェン(SEO:中)、制吐薬(SOE:低)、butorphanol(SOE:低)、トラマドール+アセトアミノフェン(SOE:低)
  • オピオイドについてはSOEが低いか、エビデンス不十分だった
  • 以下の非薬物療法が疼痛軽減と関連していた
    • 遠隔電気神経調節(remote electrical neuromodulation;SOE:中)、経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation;SOE:低)、外部三叉神経刺激(external trigeminal nerve stimulation;SOE:低)、非侵襲的迷走神経刺激(nonivasive vagus nerve stimulation;SOE:中)

考察・感想

片頭痛の発作に対する治療の効果とエビデンスの強さを、過去の膨大な研究をもとに検討されていました。近年登場した新薬や日本で未承認の薬剤、非薬物療法も含む網羅的なものであり、そもそも片頭痛の治療にこれだけの選択肢があったということに驚かされました。

片頭痛に現在よく使用されているNSAIDsやトリプタンの効果・エビデンスレベルは確かなものであり、今後も片頭痛診療の中心となることに変わりないと思います。CGRP受容体拮抗薬や5-HT1F受容体作動薬などの新薬についても有効性が証明されており、NSAIDs・トリプタンで効果や忍容性に問題がある患者などでは治療の選択肢となり得ると記載されていました。一方で、オピオイドは効果・エビデンスレベルが低く、有害事象が有意に多いことから推奨されないとされていました。この点が強調されるのはオピオイドの乱用が問題となっているアメリカの事情を反映しているのでしょう。

この論文では非常に多くの研究に基づくエビデンスを示していますが、エビデンス云々以前に、頭痛診療に携わる臨床医に求められる姿勢が次の一文に集約されているように感じました。

Choosing an acute treatment for migraine attacks requires an individualized approach for each patient:a number of factors must be considered such as …

All these factors should be considered in a shared dicision-making approach.

Next Step

日本では最近『慢性頭痛の診療ガイドライン2013』が8年ぶりに改訂され、『頭痛の診療ガイドライン2021』が出ています。新薬の位置づけに加え、NSAIDsとトリプタンの推奨度の違いについて、薬物の使用過多による頭痛(MOH:medication overuse headache)について、プライマリケア医の役割ついても言及されています。これらのポイントについてより理解を深めた上で、頭痛の診療に役立てていきたいと思います。

コメント

コメントする