全般てんかんにおける第一選択薬はバルプロ酸ですが、近年ではレベチラセタムが使用されることも増えています。臨床的効果と費用対効果はどちらが優れるのでしょうか。
The SANAD II study of the effectiveness and cost-effectiveness of valproate versus levetiracetam for newly diagnosed generalised and unclassifiable epilepsy: an open-label, non-inferiority, multicentre, phase 4, randomised controlled trial.Marson A, Burnside G, Appleton R, et al. ; SANAD II collaborators.Lancet. 2021 Apr 10;397(10282):1375-1386. doi: 10.1016/S0140-6736(21)00246-4.PMID: 33838758
論文の概要
【背景】
バルプロ酸は新規発症の全般てんかん、および分類不能のてんかんに対する第一選択薬である。ただし、催奇形性のため妊娠可能年齢の女性では他剤を使用する。レベチラセタムはエビデンスが乏しいにもかかわらず、近年処方が増えている。バルプロ酸とレベチラセタムの長期的な臨床的有効性と費用対効果を検証する。
【方法】
- 非盲検ランダム化比較試験
- 2回以上の非誘発性発作を起こした5歳以上の患者
- レベチラセタム群、バルプロ酸群に1:1に無作為に割り付け
- 主要評価項目は12ヶ月間の寛解を得るまでの期間
- 全例に対するintension-to-treat(ITT)解析とプロトコール逸脱例を除くper-protocol(PP)解析
- レベチラセタムのバルプロ酸に対する非劣性試験
- HRの非劣性マージン:1.34、絶対差10%相当
【結果】
- 2013 年4月30日〜2016年8月2日に520例を組み入れ、2年間追跡した
- ITT解析の対象:レベチラセタム(n=260)、バルプロ酸(n=260)
- PP解析の対象:レベチラセタム(n=254)、バルプロ酸(n=255)
- 対象の年齢中央値は13.9歳(5.0~94.4)、男性65%、女性35%
- 397例が全般てんかん、123例が分類不能のてんかん
- ITT解析で、レベチラセタムはバルプロ酸に対する非劣性の基準を満たさなかった(HR:1.19;95%CI:0.96~1.47)
- PP解析で、12ヶ月時点の寛解率はバルプロ酸がレベチラセタムより高かった
- 有害事象はレベチラセタム107例(42%)、バルプロ酸96例(37%)で認めた
- レベチラセタムはバルプロ酸に対し費用対効果で劣った
- 増分純便益 -0.04(95%中央範囲[CR]:-0.175~0.037)
考察・感想
全般てんかん、および分類不能のてんかんの治療において、レベチラセタムは臨床的効果でも費用対効果でもバルプロ酸に劣ることが示されました。
『てんかん診療ガイドライン2018』でも、「全般性強直間代発作に対して、バルプロ酸が第一選択薬として推奨される」とされており、レベチラセタムはラモトリギン、トピラマート、ゾニサミド、クロバザム、フェノバルビタール、フェニトイン、ペランパネルと並んで第二選択薬に位置付けられています。ただし、妊娠可能年齢の女性ではバルプロ酸以外を選択します。本研究は従来のガイドラインでの推奨を支持するものとなりました。先日取り上げた焦点てんかんに対する抗てんかん薬の比較に続き、レベチラセタムにはネガティブな結果でした。
新規発症の焦点てんかんにおける第一選択は?レベチラセタムvsゾニサミドvsラモトリギン
妊娠中可能年齢の女性において、第二選択薬の中のどれがより優れるのかは、今後の研究が待たれるところだと思います。
Next Step
抗てんかん薬に関する2件の研究を取り上げ、てんかんの治療に関する良い勉強になりました。総合診療医としては、てんかんの診断に関わる場面の方が多いので、診察や検査に関する勉強も今後の課題としたいと思います。
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