新規発症の焦点てんかんにおける第一選択は?レベチラセタムvsゾニサミドvsラモトリギン

抗てんかん薬は近年ラインナップが増えていますが、非専門医には違いが分かりにくいところです。焦点てんかんの治療として、有効性・費用対効果の面でどのような薬剤選択がふさわしいとされるのでしょうか。

The SANAD II study of the effectiveness and cost-effectiveness of levetiracetam, zonisamide, or lamotrigine for newly diagnosed focal epilepsy: an open-label, non-inferiority, multicentre, phase 4, randomised controlled trial.Marson A, Burnside G, Appleton R, et al. ; SANAD II collaborators.Lancet. 2021 Apr 10;397(10282):1363-1374. doi: 10.1016/S0140-6736(21)00247-6.PMID: 33838757 

論文の概要

【背景】

 レベチラセタムとゾニサミドは焦点てんかんに対する第一選択と位置付けられるが、有効性と費用対効果についてのエビデンスは不十分である


【方法】

  • 非盲検ランダム化比較試験
  • 2回以上の非誘発性発作を起こした5歳以上の患者
  • レベチラセタム群、ゾニサミド群、ラモトリギン群に1:1:1に無作為に割り付け
  • 主要評価項目は12ヶ月間の寛解を得るまでの期間
  • 全例に対するintension-to-treat(ITT)解析とプロトコール逸脱例を除くper-protocol(PP)解析
  • レベチラセタムとゾニサミドのラモトリギンに対する非劣性試験
    • HRの非劣性マージン:1.329、絶対差10%相当


【結果】

  • 2013 年5月2日〜2017年6月20日に990例を組み入れ、2年間追跡した
  • ITT解析の対象:ラモトリギン(n=330)、レベチラセタム(n=332)、ゾニサミド(n=328)
  • PP解析の対象:ラモトリギン(n=324)、レベチラセタム(n=320)、ゾニサミド(n=315)
  • ITT解析でレベチラセタムはラモトリギンに対する非劣性基準を満たさなかった(HR:1.18;97.5%CI:0.95~1.47)
  • ITT解析でゾニサミドはラモトリギンに対する非劣性基準を満たした(HR:1.03;97.5%CI:0.83~1.28)
  • PP解析で12ヶ月時点の寛解率はラモトリギンが他2剤よりも優れていた
    • レベチラセタム(HR:1.32; 97.5%CI:1.05~1.66)、ゾニサミド(HR:1.37; 97.5%CI:1.08~1.73)
  • 有害事象はラモトリギン108例(33%)、レベチラセタム144例(44%)、ゾニサミド146例(45%)で認めた
  • ラモトリギンは他2剤よりも優れた費用対効果を示した
    • ラモトリギン1.403QALY(97.5%中央範囲[CR]:1.319~1.458)、レベチラセタム1.222(1.110~1.283)、ゾニサミド1.232(1.112~1.307)

考察・感想

新規発症の焦点てんかんに対して、ラモトリギンが臨床的有効性でも費用対効果の面でもレベチラセタムとゾニサミドより優れる可能性が示唆されました。

これまでのてんかんのガイドラインでは、新規発症の焦点てんかんに対して、特定の薬剤が他よりも強く推奨されることはありませんでした。『てんかん診療ガイドライン2018』では、「第一選択薬としてカルバマゼピン、ラモトリギン、レベチラセタム、次いでゾニサミド、トピラマートが推奨される」となっています。臨床現場ではレベチラセタムが圧倒的に多く処方されている印象ですが、本文にもそのような記載があったのでこれは世界的な傾向のようです。

本研究の結果を受けて、焦点てんかんの第一選択薬についてガイドラインに変更が出るかもしれないので、今後の情報に注意したいと思います。

Next Step

てんかんは総合診療医にとっても比較的よくみる疾患です。十分に効果が期待でき、副作用の懸念が少なく、用量調整が複雑でない抗てんかん薬の登場で、特に高齢者のてんかんは非専門医にとっても診療のハードルが下がっているように感じます。今回改めててんかんについて勉強し、てんかんの処方について思考停止になっている部分があったことに気付かされました。最新のエビデンスに注意しながら、それぞれの薬剤の特性や注意点を把握した上で処方を選択する必要があることを改めて認識しました。

参考文献

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