糖尿病患者における低GI/GL食の効果は?

健康志向の高まりとともによく耳にするようになった低GI/GL食。糖尿病患者にどのような効果があるのでしょうか。

Effect of low glycaemic index or load dietary patterns on glycaemic control and cardiometabolic risk factors in diabetes: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials.Chiavaroli L, Lee D, Ahmed A, BMJ. 2021 Aug 4;374:n1651. doi: 10.1136/bmj.n1651.PMID: 34348965

論文の概要

【目的】

 欧州糖尿病学会(EASD)の食事療法に関する診療ガイドラインの改訂に資する情報を提供する


【デザイン】

 システマティックレビュー、メタアナリシス

【データ】

 Medline, Embase, and the Cochrane Libraryの2021年3月13日までの文献を検索

【適格基準】

 糖尿病患者における低GI/低GL食の効果を3週間以上調査したランダム化比較試験

【評価項目】

  • 主要評価項目:HbA1c
  • 副次評価項目:血糖コントロール(空腹時血糖、空腹時血中インスリン濃度)、LDLコレステロール、HDLコレステロール、non-HDLコレステロール、アポB、中性脂肪、BMI(body mass index)、腹囲、血圧、CRP

【データの抽出・統合】

  • 2人の調査者が個別にデータを抽出し、バイアスリスクを評価した
  • データは変量効果モデルにより統合された
  • GRADE(grading of recommendations assessment,development, and evaluation)によりエビデンスの確実性を評価された

【結果】

  • 1型・2型糖尿病患者1,617例を対象とする29の試験が解析された
  • 主な対象は、中年、肥満、血糖降下薬またはインスリンで中等度にコントロールされている2型糖尿病患者
  • 低GI/GL食は高GI/GL食と比べてHbA1cを有意に低下させた(平均差−0.31%,95%CI: -0.42~-0.19%, P<0.001; 異質性I2=75%, p<0.001)
  • 低GI/GL食は高GI/GL食と比べて空腹時血糖、LDLコレステロール、non-HDLコレステロール、アポB、中性脂肪、体重、BMI、収縮期血圧、CRPを低下させた
  • 低GI/GL食と高GI/GL食で血中インスリン濃度、HDLコレステロール、腹囲、拡張期血圧に有意差はなかった
  • GLの差とHbA1c、GIの絶対値と収縮期血圧の間に用量依存性が認められた
  • エビデンスの確実性はHbA1cの低下で高く、副次評価項目の多くは中程度だった

<補足>

  • Glycemic  Index(GI):食後血糖上昇度の指標、55以下を低GIとする
  • Glycemic Load(GL):各食品中の炭水化物の量[g]×GI÷100

考察・感想

低GI/GL食は糖尿病患者のHbA1cを有意に低下させ、脂質異常、肥満、血圧等についても良好な効果を得られるという結果でした。

低GI/GL食が血糖コントロール改善や心血管疾患リスク低下の効果があることは、既に多くの先行研究で示されていました。今回はガイドラインの改訂にあたってエビデンスの確実性についての評価も追加され、HbA1c低下効果については確実性が高いと評価されました。

HbA1cの絶対的な低下効果は必ずしも高くありませんが、コレステロール、体重、血圧を含む幅広い効果が期待でき、糖尿病患者の健康管理において無視できないインパクトがあるといえます。薬物療法に加えて、有効な介入ポイントであることは間違いないでしょう。

Next Step

Glycemic IndexやGlycemic Loadについては、この論文を読むまで正直あまり知識がありませんでした。GI値一つとっても、食品による違いのみでなく、調理方法や食べる順番など様々な要因が影響するようであり、まだまだ奥が深い分野だと感じました。外来診療の中で「白米を玄米に替えてみてはどうでしょう」などと提案することもありますが、あまり手応えを感じないのが現実です。毎日の食事の中で患者さんが実践しやすい工夫を提案できるように、栄養についてもさらに学びを深めたいと思います。

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