ANCA関連血管炎の寛解導入において、リツキシマブ+減量ステロイドはリツキシマブ+高用量ステロイドに劣らないか?

ANCA関連血管炎の治療におけるステロイドの用量についての論文です。日本発のエビデンスです。

Effect of Reduced-Dose vs High-Dose Glucocorticoids Added to Rituximab on Remission Induction in ANCA-Associated Vasculitis: A Randomized Clinical Trial.Furuta S, Nakagomi D, Kobayashi Y, Hiraguri M, Sugiyama T, Amano K, Umibe T, Kono H, Kurasawa K, Kita Y, Matsumura R, Kaneko Y, Ninagawa K, Hiromura K, Kagami SI, Inaba Y, Hanaoka H, Ikeda K, Nakajima H; LoVAS Collaborators.JAMA. 2021 Jun 1;325(21):2178-2187. doi: 10.1001/jama.2021.6615.PMID: 34061144 

論文の概要

【背景】 

 ANCA関連血管炎の標準的な寛解導入療法は高用量ステロイドとシクロホスファミドまたはリツキシマブの併用である

 これらのレジメンは寛解率は高いが、高用量ステロイドによると想定される有害事象の問題がある


【目的】 

 標準的な減量ステロイド+リツキシマブと高用量ステロイド+リツキシマブの効果と有害事象を比較する


【デザイン、セッティング、対象】

  • 第Ⅳ相、多施設共同、非盲検、ランダム化、非劣性試験
  • 新規にANCA関連血管炎と診断され、重度の糸球体腎炎や肺胞出血を伴わない患者140例
  • 2014年11月〜2019年6月に試験に組み入れ、2019年12月まで追跡


【介入】

 以下の2群に無作為に割り付けた

  • 減量ステロイド(0.5mg/kg/day)+リツキシマブ群
  • 高用量ステロイド(1mg/kg/day)+リツキシマブ群

【評価項目】

  • 主要評価項目:6ヶ月時点の寛解率、事前指定の非劣性マージンは-20%
  • 副次評価項目:効果に関する評価8項目、安全性に関する評価6項目

【結果】

  • 無作為割り付けされた140例(年齢中央値73歳、女性81例[57.8%])のうち134例(95.7%)が試験を完遂した 
  • 6ヶ月時の寛解率において、減量ステロイド群は高用量ステロイド群に対し非劣性だった 
    • 減量ステロイド群の寛解は49/69例(71%)、高用量ステロイド群の寛解は45/65(69.2%) 
    • 両群間の差: 1.8%(片側95%CI:-13.7~∞) 
  • 重度の有害事象は減量ステロイド群で高用量ステロイド群よりも有意に少なかった 
    • 減量ステロイド群: 13例に21件(18.8%)、高用量ステロイド群: 24例に41件(36.9%) 
    • 両群間の差: -18.1%(95%CI: -33.0~-3.2) 
  • 重度の感染は減量ステロイド群で高用量ステロイド群よりも有意に少なかった 
    • 減量ステロイド群: 5例に13件(7.2%)、高用量ステロイド群: 13例に20件(20.0%) 
    • 両群間の差: -12.8%(95%CI: -24.2~-1.3)

考察・感想

ANCA関連血管炎の寛解導入において、従来の標準治療であるステロイド1mg/kg/dayから0.5mg/kg/dayに減量しても、寛解率を下げることなく、有害事象は減少するという結果でした。

この研究の背景として、寛解導入後のステロイドを早いペースで減量するレジメンでも死亡や腎不全のリスクは変わらないという研究(PEXIVAS研究)がありました。また、無作為割付はされていませんがリツキシマブとの併用でステロイド0.5mg/kg/dayに減量したレジメンで1mg/kg/dayと同様の寛解率を得られることを示唆する研究(RITAZAREM研究)がありました。

PEXIVAS研究Walsh M, et al. N Engl J Med. 2020;382(7):622-0631.

RITAXAREM研究Smith RM, et al. Ann Rheum Dis. 2020;79(9):1243-1249.

比較的PR3-ANCAの陽性率が高い欧米に対し、日本ではMPO-ANCA陽性例が多く、患者の年齢も高めという違いがあります。本研究の対象者の年齢中央値は73歳と高く(PEXIVAS研究 63歳、RITAZAREM研究 59歳)、治療全体のステロイド投与量を少なくし有害事象を減らすことのメリットは大きいと考えられます。

重篤な糸球体腎炎、肺胞出血を伴う症例は対象から除外されていることもにも注意が必要です。本研究の成果の恩恵を受けるためにも、やはり早期診断が重要になると思います。

Next Step

総合診療医はANCA関連血管炎の治療に携わることは多くありませんが、診断に関わることはよくあります。ANCA関連血管炎は病状悪化のスピードが早く致命率も高いため、早い段階で疑い、適切なタイミングで専門医に紹介できるようにしたいです。

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